
新規顧客開拓とは、これまで自社と関係がなかった相手に対し、新たな顧客となってもらうために売り込む営業活動です。
具体的には、以下の5つのステップで順番に行っていきます。
1.ターゲットを明確にする
2.アプローチ方法を決める
3.潜在顧客へのメッセージを決める
4.見込み客を育てる
5.見込み客の反応を高い数値化する
初対面で、何の信頼関係もない相手にモノを売るのは非常に難しいことです。しかし逆を返せば、何度か顔を合わせたり電話やメールで話をしたりし、一定の信頼関係ができている相手であれば、モノは売りやすくなるのです。
上述の5ステップで言えば、「4. 見込み客を育てる」の部分にしっかりと注力することで、まだ商品やサービスを購入する前の見込み客までをもファンにし、快く購買に至らせることができます。
<この記事を読めばわかること> ・新規顧客開拓の5ステップ ・潜在顧客にアプローチする14の方法の特徴と費用目安 ・【ケース別】おすすめのアプローチ戦略 |
さらに、見込み客を魅了するインバウンド戦略についてもご紹介していきます。
新規顧客の開拓が命題になっているあなたがいま取るべき行動が、きっとお分かりになるでしょう。
1. 新規顧客開拓のための方法5ステップ
新規顧客開拓を効率的に進めるための施策には、5つのステップがあります。
1.ターゲットを明確にする
2.アプローチ方法を決める
3.潜在顧客へのメッセージを決める
4.見込み客を育てる
5.反応の高い見込み客に営業する
実は、あなたが新規顧客にしたいと思う「お客さん」は、同一の相手であっても状態が以下の3通りに分かれています。
あなたの会社のことも商材のこともまったく知らない状態から、商談が成立して「新規顧客」になるまでには、過程ごとの相手の状態の変化があります。
相手の状態に合わせた段階ごとの情報提供や誘導を踏んでいくことで、晴れて「新規顧客」に至らせることができるのです。
初めて新規顧客開拓を行うという方にもわかりやすいよう、それぞれのステップの目的と方法、やるべきことについて具体例を挙げながら説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
1-1. STEP1:ターゲットを明確にする
どんなに優れた商材でも、それをちょうど欲しいと思っている相手がいたとしても、商材の存在そのものを知らなければ絶対に購入されることはありません。
まずは潜在顧客に対して、商材の存在を知らせる必要があります。
そこで最初に行うべきは、商材の存在を知らせるべきターゲットとは、どんな問題を抱えているだれなのかを明らかにすることです。
商品開発の際に、ユーザー像はある程度絞り込まれていることでしょう。しかし今度はもっと具体的に、商材の「ユーザー」「担当者」「決裁者」を想定します。
基本的に、商材を知らせるべき相手は選定・購買の「担当者」になります。
ではこの担当者は、一体どんな条件や希望を持っているのでしょうか。
選定担当者はユーザーから、顧客の要望や仕様などの現場の意見を聞き取ります。また同時に、選定担当者は決裁者から、購買のための合理的な理由を求められています。
選定担当者はユーザーと決裁者双方の意見を聞いて条件を設定し、選定対象となる商品やサービスの質、専門性の高さなどについて情報収集を行うのです。
もちろん、小規模事業者や個人事業主などが相手の場合は、選定も決裁もすべて社長個人が行うことが多いため、社長個人をターゲットとします。
この段階で大切なのは、だれに向けてその商材の魅力を語ればいいのか、その相手はどんな問題を抱えているのかを、しっかりと見定めること。その上で、ターゲットの興味関心や購買意欲を特定していくのです。
ターゲットを明確にすることで、手法やメッセージの内容がぶれなくなり、アプローチの効果が上がるため、このターゲット設定は必ず行いましょう。
次に、ターゲットをより明確にするための実際の方法を説明します。
1-1-1.ターゲットを明確にする2つの手法
ターゲットを明確にするための方法として、有効なのは以下の2つです。
■STP分析
主に競合他社との差別化要因を見極めるために行うマーケティングの分析方法です。
どの市場を狙い、どのような立ち位置でアピールしていくか、最も効果的な手段を決定するもの。下記3つの頭文字を取って名付けられています。
・セグメンテーション(Segmentation)=同質なニーズを持つ顧客ごとに分けて考え、市場を細分化する
・ターゲティング(Targeting)=細分化した市場の中から、どの市場を狙うのかを決める
・ポジショニング(Positioning)=設定した市場における自社の立ち位置を明確にする
市場の中で、ターゲットとなる顧客グループを設定し、そこで自社商材が他社とどのように異なるのか、より顧客のニーズを満たすものなのかを明確にしていくものです。
例として、会計事務所が新規顧客の開拓をすると仮定し、STP分析を行うとします。
セグメンテーションでは、まず対象となる法人の地域と規模、業種などを分けて、それぞれの市場規模の大きさを可視化します。
次いでターゲティングでは、細分化した業種のうち、業種ごとに顧客がどんな問題を抱えているのかを洗い出し、自社の得意分野で解決できる市場を探します。
そしてポジショニングでは、その市場における競合他社の規模や強みを探り、自社の差別化ポイントを言語化していくのです。
このSTP分析により、競合との不要な争いを避けながら、自社の強みが生かされる市場で、言語化された戦略という武器を持って新規顧客の開拓を行うことができるのです。
■ペルソナ設定
ペルソナとは、「架空の象徴的なユーザー像」のことです。
架空ではありますが、実在する一人の人間かのように、年齢や性別などの属性情報や趣味、家族構成、価値観や生活パターンなどを設定します。
およそ仕事や業務には関係ないだろうと思われる、外食頻度や休日の過ごし方などのプライベートな部分まで、細かく挙げていくことが大切です。
すでにその商材に顧客がついている場合は、顧客の一人をモデルにして割り出していくとやりやすいでしょう。
ペルソナを設定することで、ターゲットの興味関心がどこにあるか、日常的に触れる媒体は何かなどを詳細に探ることができるのです。
このペルソナ設定ができていると、これ以降のそれぞれのSTEPにおける戦略や意思決定がより的を得たものになり、メンバー内での認識にもブレが生じにくくなります。
1-2. STEP2:アプローチ方法を決める
ターゲットを明確にしたところで、ではそのターゲットにいつ・どこで会えるのかを調べます。
担当者がわかっていれば、業務時間中に直接連絡を取ればいいので問題はありません。
しかし新規顧客の開拓では、ほとんどの場合、自社商材の存在を知らない潜在顧客に対してアプローチすることになります。
ターゲットとなる潜在顧客がいない場所でどんなに商材の魅力を語っても、ターゲットの耳には届きません。そこで、ターゲットとなる潜在顧客と、接点を持てる場所を探るのです。
・どこで情報収集しているか
・どんな方法で情報収集しているか
・どんな場所を訪れるか
・移動手段は何か
・情報収集の時間帯はいつか
・検索するとしたらどんな単語を使うか
といった内容を、設定したペルソナを元に洗い出していき、有効なアプローチ方法を見つけていきます。
例えば、ペルソナの移動手段が主に自動車である場合は、ラジオ広告が効果的と言えます。
ゴルフが趣味であればゴルフ用品店との提携でイベントを企画したり、利用しているサブスクリプション・サービスにダイレクトメールを同梱するなど、よりピンポイントなアプローチ方法が考えられます。
ペルソナにより、どの方法を選ぶか、どの方法を組み合わせるかは無数です。
実際に潜在顧客にアプローチするための基本的な14の手段を下記にまとめました。それぞれの特徴や費用目安については、2.『潜在顧客にアプローチする14の方法』で詳しく解説していきます。
1-3. STEP3:潜在顧客へのメッセージを決める
潜在顧客は「あなたの会社のことも商材のことも知らないが、商材について詳しく知れば興味を持つ可能性のある人」です。
このことを踏まえ、アプローチする際に外せないメッセージは以下の5ポイントです。
①会社の存在を知らせる
②商材の存在を知らせる
③商材によって解決される悩み
④商材によってもたらされる良い未来の状態
⑤ほかの競合商品との差別ポイント
どんな媒体を使ったとしても、伝えるべきメッセージの基本はこの5ポイントです。
媒体によって順序を変えたり、強弱をつけて訴求することもありますが、このメッセージを基本にして、STEP2で選出したアプローチ方法で、潜在顧客に語りかけていきます。
例えばダイレクトメールやプレスリリースなど、こちらからの情報をひとまず一方的に送ることができる媒体では、③の「商材によって解決される悩み」をキャッチにし、相手に読もうと思わせるような数字を見やすく掲載して語りかけます。
一方、テレアポや訪問営業では、数字などは視覚に訴える場合よりも印象に残りにくいため、相手の切り返しや質問などを想定したスクリプトを用意し、流れの中で相手の興味ポイントに合わせて話を展開させていきます。
どちらの場合も、必ず反応や結果を振り返り、全体で共有してブラッシュアップしていくことが大切です。
1-4. STEP4:見込み客を育てる
会社や商材について興味を持ち、名刺交換や資料請求などで個人情報が特定された相手は、いよいよあなたの会社の「見込み客」となりました。
しかしこの状態では、相手によってはまだ興味・関心がそこまで高くないかもしれません。場合によっては、競合他社の商材についての方が情報収集が進んでいたり、すでに使用していたりすることもあるでしょう。
まだ関心度が低い状態の見込み客に、突然具体的な商材を持ち込んでも、話を聞く準備はできていません。見込み客を得たら、まずは適切に会社のことや商材について、学んでもらう機会を提供します。
具体的には、専門分野における知識や情報を提供し、その道のプロであることを認識させ、信頼を勝ち得るのです。日常的なオンラインによる情報提供に、顔と顔を合わせるオフラインの情報提供を両方組み合わせることで、担当者にとって「頼りになる」存在になっていくことができます。
オンラインとオフラインの情報提供は、それぞれ以下のような媒体を活用します。
■オンライン
・自社webサイト(コンテンツマーケティング)
・メルマガ
・SNS
■オフライン
・説明会
・セミナー
・無料体験会
・交流イベント
前述の会計事務所の場合、オンライン施策として自社webサイトで節税やM&Aに関する役立ち情報をコラムとして掲載したり、メルマガで毎日、顧客からよくある素朴な疑問に対する一問一答を配信したりします。この受け皿として、窓口を設けて無料相談を受け付けるなどします。
またオフラインでは、「事業承継」をテーマに既存顧客と見込み客との異業種交流会を開催したり、専門的な法務知識を持ってセミナーを開催したりすることで、見込み客の囲い込みをしていくことができます。
1-5. STEP5:反応の高い見込み客に営業する
見込み客の反応を数値化することで、特に反応の高い顧客に絞って効率よく営業をかけることができます。
反応の数値化とは、購買意欲の高さを表す各行動に点数をつけること。その合計点でホットリード(確度が高い見込み客)を見極めます。
行動に点数をつけるため、例えば以下のような行動がどれだけあるかのスコア表を社内で作ります。
・自社webサイトの特定箇所の閲覧
・メルマガのアクション率
・問い合わせの回数や内容の段階
・オフラインの参加率
反応が高いということは、すでに購買候補としてかなりの終盤戦に入ってきているということ。可能であればオプションの提案など最後の一押しのメリットを提示してしっかりと商談を持ちかけることで、無駄なく効率的に新規顧客にへとステージアップさせることができます。
前述の会計事務所の場合では、自社webサイトのコラム記事のブックマーク率や、新着記事への反応時間、メルマガの開封率、セミナーの参加有無などに点数をつけ、一定水準以上の高得点に達した見込み客をホットリードとし、相手の決算期に合わせた具体的な商談を持ちかけるようにします。
具体的には、電話やメールで担当者にアポイントを取り、対面で営業することで、案件の受注に結びつけるのです。
2.潜在顧客にアプローチする14の方法
新規顧客の開拓には、先の章で述べたように、潜在顧客への適切なアプローチが重要です。
潜在顧客へのアプローチには、主に以下の14の手段があります。
近年は、プッシュ型の営業よりもプル型の営業が主流と言われています。
その理由として、プル型営業は、すでに興味関心のある情報や商材についてある程度のイメージを持っている潜在顧客にアプローチするため、イメージと合致していれば比較的話が早く進む傾向があるからです。
しかしだからといって、プル型がプッシュ型よりも簡単だというわけではありません。
大まかではありますが、プッシュ型とプル型のメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
プッシュ型 | ・自社主導のため、納期や金額などの交渉で有利 | ・ニーズに気付かせることから始めるため時間がかかる ・最初の話を聞いてもらうまでに至るのが難しい |
プル型 | ・相手がすでにある程度のイメージを持っているので展開が早い | ・相手主導のため、競合他社との比較検討などで利益率が下がりがち ・明確な差別化要素が必要になる |
BtoB商材とはいえ、プル型の場合は特に顧客のニーズを的確に捉えてこちらから積極的に寄り添うなど、BtoC商材と変わらない緻密なマーケティングが必要なのです。
旧来の、商材ありきのプッシュ型だけの営業しかやってきていないのであれば、プル型は準備段階に時間がかかるため、手間に感じる部分もあるでしょう。
プッシュ型とプル型の基本的なメリットとデメリットを踏まえたところで、一覧で挙げた14の手段について、それぞれの特徴や費用目安などを解説していきましょう。
2-1.【プッシュ型】マスメディア広告
マスメディア広告を用いるのは、「信頼のおける企業かどうか」を伝える目的があります。
取引が長期的・反復的になる可能性が高いBtoBでは、商材そのものの魅力もさることながら、企業そのものの安全性や将来性なども判断材料になるのです。
選定した取引企業が、将来的に会社に損失を与えるようなことがあっては、担当者としての責任も問われかねません。
企業理念やビジョンがしっかりしている会社であれば、取引相手として信頼がおけると思われるでしょう。
【マスメディア広告のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・信頼を得られる ・従業員やその家族の安心要素になり、モチベーションが上がる | ・媒体費が高額になる場合がある ・媒体費のほか、制作費もかかる |
【マスメディア広告の費用目安】
■テレビ
関東エリア/キー局(地上波) | 30,0000円〜 |
関西エリア | 40,000円〜 |
地方局 | 14,000円〜 |
CS各局 | 18,000円〜 |
BS | 50,000円〜 |
参考:広告ダイレクト
テレビCMの放映にかかる費用は、キー局か地方局かという放送世帯数に加え、番組の人気、曜日、時間帯によっても大きく変わります。
また、一回のみの放映ではターゲットに見てもらえる可能性が低いため、何度も放映できるよう、複数の広告枠を買う必要があります。
この他に制作費がかかりますが、撮影を伴うものはおおよそ100万円〜というのが相場です。
有名タレントを起用する場合は、その他に契約料がかかってきます。
■ラジオ
関東エリア(東京を含む) | 60,000円〜 |
関東エリア(東京を含まない) | 12,000円〜 |
関西エリア | 33,000円〜 |
その他地方局 | 12,000円〜 |
参考:広告ダイレクト
ラジオCMもテレビと同じように、時間帯や番組によって費用が変わってきます。ターゲットが社用車で移動する傾向がある場合は、大きな刷り込み効果をあげることができるでしょう。
制作費が別途かかりますが、おおよそ15万円程度からが相場です。
■新聞
全国紙 | 一面 | 朝日新聞 読売新聞 毎日新聞 日本経済新聞 産経新聞 | 39,855,000円 47,910,000円 25,920,000円 20,400,000円 25,920,000円 |
全5段(38cm×18cm程度) | 朝日新聞 読売新聞 毎日新聞 日本経済新聞 産経新聞 | 15,355,000円 17,640,000円 9,595,000円 7,360,000円 4,900,000円 | |
突出(5cm×8cm程度) | 朝日新聞 読売新聞 毎日新聞 日本経済新聞 産経新聞 | 1,300,000円 1,647,000円 1,092,000円 579,000円 610,000円 |
地方紙の場合は、全国紙と比べて購読世帯数がかなり少なくなるため、目安料金も安くなってきます。特定の地域における出稿であれば、継続的な掲載を狙える可能性もあるでしょう。
地方紙 | 一面 | 1,500,000円〜 |
全5段(38cm×18cm程度) | 595,000円〜 | |
突出し(5cm×8cm程度) | 77,700円〜 |
参考:広告ダイレクト
企業としての姿勢を伝える新聞広告というと、新年の挨拶や、災害などの有事における哀悼など、一面で大きく掲載されるものが思い浮かぶかもしれません。
しかし、マーケティングの基本として、ターゲットと一回きりの派手な遭遇をするよりも、こまめな接触回数が多いほど、印象がよくなるという法則があります。
小さなスペースでも、一定期間に何度も集中して掲載するなど、工夫次第で企業理念やビジョンを伝えることは可能です。
2-2.【プッシュ型】テレアポ
テレアポの最大の魅力は「その場で何件でもアプローチできる」手軽さです。移動のための時間も手段も必要ないため、コストはかなり安く抑えられます。
対面よりも相手に関する情報が得難いため、経験やスキルによる臨機応変な対応が結果に影響します。
【テレアポのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・コストが安い・費用対効果が高い | ・話を聞いてもらえる時間が短い ・担当者と話せないことも多い |
【テレアポの費用目安】
自社で営業担当者が電話をかけるのであれば、人件費と通信費だけで済みます。
テレアポ営業代行を依頼する場合は、1コールあたり100〜120円が相場です。1時間にかけられる電話が15件程度なので、1時間あたり1,500〜1,800円ほどを見積もっておくといいでしょう。
成果報酬型では1つのアポイントにつき10,000円程度から発注することもできるので、高価格帯の商材や、商材に自信がある、明確な差別化ができているという場合はすぐに回収が見込めるでしょう。
しかし、テレアポのアポイント率は0.3〜10%と大きな差があります。アポイントが取れるかどうかは、営業トークの内容で大きく関わってくるのです。
自社で行うにしても外注するにしても、しっかりとスクリプトを作成して対策するなど、アポイント率を部署全体で高める準備が必要です。
2-3.【プッシュ型】メール営業
担当者のメールアドレスがわかっている場合には直接、担当者がわからない場合には、ターゲット企業のwebサイトの問い合わせフォームからメールを送ります。
タイトルで簡潔に提供できるメリットを伝えることで開封率をあげたり、詳しい資料請求のためのリンクを貼ったり、読ませる流れを作ることで、相手にアクションさせることができます。
【メール営業のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・コストが安い ・データ計測や改善がしやすい | ・開封されないことも多い |
【メール営業の費用目安】
自社で営業担当者がメールを送るのであれば、人件費と通信費だけで済みます。
テレアポと同じく、アポイントが取れるかどうかは、メールの内容に大きく関わってくるため、営業個人ではなく部署全体で成功例を共有し、データ分析を重ねて改善策をとることで、アポイント率を高めることができます。
平均的な返信率は0.04〜1%と、数を打つことで成果を出すことができるため、リストが少ない場合は内容をしっかり精査して、簡潔で魅力的なタイトルを考える必要があります。
外注する場合は、メール1件あたり20〜30円ほど、または月額固定費で数万円程度が相場です。
2-4.【プッシュ型】ダイレクトメール
ダイレクトメールは、送付前に先方に事前確認をすることで、開封率をあげることができます。確認する内容は、送付してもいいかどうかと、だれ宛に送ればいいかだけです。アポイントを取ることが目的の電話ではないため、だれでもかけやすいでしょう。
画面スクロールをしなければ全体が見えないメールよりも、一目で全体を俯瞰できるダイレクトメールは、視覚に訴えるクリエイティブの工夫が結果を左右します。
【ダイレクトメールのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・送りたい情報をまとめて送れる | ・未開封で放置される場合がある |
【ダイレクトメールの費用目安】
資料のデザイン費・印刷費と送料がかかります。印刷費と送料は数と大きさや重さによってほぼ決まっていますが、デザインを外注する場合は、大きさとページ数、業者によってもかなり大きな差があります。
自社でディレクションができるのであれば、デザイン費だけであれば個人のデザイナーなどに2〜3万円で発注できることもありますが、パンフレットなどを企画から外注する場合は20万円は見ておくべきでしょう。
一般社団法人日本ダイレクトメール協会の調査によれば、2019年のダイレクトメールの開封率は74.0%。開封率をあげるための論理的な工夫が研究されているため、ぜひ活用したい方法です。
2-5.【プッシュ型】ファックスDM
ファックスDMは、すでに内容が見えている状態で届くため、目に留まりやすいのが特徴です。そして紙媒体の良さとして、相手の手元に物理的に残るため、相手の都合のいい時にさっと読み返してもらえます。
原稿とFAX番号のリストさえあればすぐに送ることができ、業者によっては1時間に3万通もの配信ができる環境が整っているため、大量送信も可能です。
【ファックスDMのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・目に留まりやすい・紙媒体でもっとも費用が安い | ・相手の紙とインクを使うのでクレームになることもある ・モノクロ一色なので細かい図や写真は潰れやすい |
【ファックスDMの費用目安】
自社で送信する場合は、A4用紙とペン、FAX、送信リストがあれば、通信費だけで済みます。
送信を業者に依頼する場合は、一件あたり3円〜が相場です。
平均反響率は0.1〜0.3%なので、リストが少なくとも1,000件以上はある場合に使用したい方法です。
2-6.【プッシュ型】訪問営業(飛び込み)
「どこに頼んでもあまり結果に差がない」と思われがちな業種・分野においては、訪問営業は十分に新規顧客の開拓が可能な方法です。
人材派遣やオフィス備品のリースなどは、比較的安価で月極めで契約更新がされるため、すでに競合他社の利用があったとしても、話を聞いてもらえる可能性があります。
【訪問営業のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・対面するため信用を得られやすい ・相手企業のさまざまな情報が目視で手に入れられる ・「いらない理由」を直接聞くことができる | ・話を聞いてもらえるかは属人的要素が大きい ・移動に時間がかかり、数を稼ぐことができない ・門前払いなど、肉体的精神的ストレスが大きい |
【訪問営業の費用目安】
費用対効果の低さや効率の悪さが目立つ訪問営業ですが、外注することも可能です。おおよその外注費用は以下の通り。
固定報酬:月額50〜60万円
アポイント獲得報酬:一件あたり2.5〜3万円
成約報酬:売上金の30〜50%
固定・成果複合型:月額25〜30万円+成約報酬
専門性の高い分野では、専門知識を持つ営業代行を依頼するため、ここに挙げた以上の金額になります。
外注費用を高いと見るかやすいと見るかは、顧客獲得単価と代行費用との落とし所次第と言えます。
2-7.【プル型】インターネット広告
インターネット広告は、比較的短時間で購買意欲の高い見込み客をたくさん集めやすい方法です。
広告出稿の結果が明確にわかり、CTR(クリック率=広告の表示回数のうちクリックされた回数の率)やCV(コンバージョン=商品購入などの最終的効果)などの数値を把握できます。それぞれの数値を元に効果検証を正確に行うことができるため、広告内容を精査し、その後の広告効果を上げることができます。
【インターネット広告のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・費用対効果が高い・ターゲットを絞り込める | ・webマーケティングの知識が必要・鮮度が命なので内容を更新し続ける必要がある |
【インターネット広告の費用目安】
インターネット広告の費用体系には細かい設定が各種あり、それぞれでかかり方も変わってきます。
費用のかかり方 | 費用 | 注意点 | |
---|---|---|---|
純広告 | 広告の表示回数や表示期間による | 数十万〜数千万円 | 媒体費そのものが高額になる場合がある |
リスティング広告 | 広告のクリック数(CT数)による | 10円〜数百円 | 検索ワードによってはクリック単価が高騰する場合もある |
アフィリエイト広告 | 成果(CV)に対して報酬を支払う | 商材価格の10〜30% | アフィリエイターの誇大広告によるクレームの可能性がある |
2-8.【プル型】SEO対策
ホームページでSEO対策を講じるのは、見込み客を集める上でとても有効な方法です。専門分野に関する質の高い情報を提供し続けることで、自社の得意分野にまつわる単語での上位検索が望めます。
内部SEOへの取り組みは、自社webサイトを訪れるユーザーを満足させることにそのままつながるため、企業としての姿勢や誠実さをも示すことができるものです。
効果を得るまでに時間はかかりますが、安定的で長期的な新規顧客の開拓ができます。
【SEO対策のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・費用対効果が高い ・ブランディングができる | ・時間がかかる |
【SEO対策の費用目安】
自社の専門領域や得意分野で記事を書くことは、基本的には自社内でも行うことができるものです。しかし検索上位に表示される良質なコンテンツを目指すには、専門業者に発注した方がいいでしょう。
「内部SEO対策ができる」とうたう業者はたくさんあり、1記事あたりの費用も1,000円から数十万円と幅広いのが現状です。しかし金額と品質はかなり相関性が高いため、内容の薄い記事を100本依頼するよりも、ユーザーニーズを捉えた良い記事を10本持っている方が、検索エンジンのガイドラインに引っかかるリスクもなく、安心です。
2-9.【プル型】展示会
情報収集のほとんどが非対面化している中で、展示会は、実際に対面で商材を説明し、体験までしてもらえる数少ない場所です。単なる情報収集のためだけでなく、具体的な課題感を持って訪れる来場者もいるため、その場で商談に発展する可能性もあります。
【展示会のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・特定のテーマに関する興味を持つ相手に直接会える | ・出展料に加えて、準備のための時間や費用がかかる |
【展示会の費用目安】
イベント主催者に支払う出展料は1小間(約:幅3m×奥行3m=9平米)あたり30万円程度が基本的な相場ですが、これに加えてブースの制作費がかかってきます。
ブースの広さや作りこみの程度、どんな資料を配布するかで、制作にかかる費用は大きく異なってきます。
・ブースのコンセプト・構成:10〜50万円
・各種制作物(のぼり、ポップ、チラシ、ノベルティ等):20〜100万円
・搬入および搬出、施工:10〜30万円
出展料と合わせると、安くても100万円はかかってくるため、名刺の獲得枚数やアンケートの回収数などの目標を事前にしっかりと定め、見込み客獲得にかかる費用対効果の設定をしておくことが大切です。
2-10.【プル型】プレスリリース
広告と異なり無料で媒体に記事を掲載してもらうプレスリリースは、信頼度が高く、大きなブランディング効果を得られるものです。商品やサービスといった具体的な商材のことだけでなく、専門分野における研究成果や顧客分析と行った、自社にしか出すことのできない一時情報は、媒体側から見るととてもありがたい情報になります。
【プレスリリースのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・掲載された場合の費用対効果が高い | ・掲載は確実ではない・記事内容はコントロールできない |
【プレスリリースの費用目安】
媒体社の担当のメールアドレスやFAX番号を知っている場合は、直接送信すれば良いのでコストは通信料しかかかりません。
媒体社のリストがない場合は、プレスリリースの代行会社に送信を依頼しますが、その費用は月額10,000円からが相場です。
どちらの場合においても、相手に読まれるための文面の工夫が必要になります。
また、自信のある内容については、媒体社に直接持ち込んで担当者に対面で説明することで、掲載の可能性を高めることができます。
2-11.【プル型】SNS
SNSを運用するにあたってのターゲットは、企業アカウントではありません。ターゲットとなる顧客の部署、部門などを検討し、企業内個人を対象に発信します。年齢により利用しているSNSも異なるため、第1章のSTEP1で設定したペルソナをターゲットにして、利用するSNSを決めるとよいでしょう。
発信する内容は、技術紹介、社会貢献活動、会社の歴史、社員紹介、クイズなど、フォロワーの興味を喚起できそうなものを探りながら決めていきます。
SNSは、プライベート含めて気軽に企業担当者と関わることができるツールとして重宝します。
【SNSのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・拡散による、より早い認知拡大が見込める ・コストが安い ・効果測定がしやすい | ・誤解や誤った情報に対する訂正が難しい ・広告色が強すぎると敬遠される |
【SNSの費用目安】
基本的に自社内で行うことのできるものですが、ネタが尽きたり人員を割くことができなかったりする場合、外注することも可能です。
記事の投稿を代行するだけなら月額で10万円ほどで済みますが、フォロワーのコメントに返信するなどオンタイムのやりとりが必要な場合は月額20〜30万円。webマーケティングの知識のある担当者に分析まで依頼すると月額50万円ほどかかるため、ほかのweb施策と合わせて専門の担当者を直接雇用するかどうかの考えどころと言えます。
2-12.【プル型】セミナー
情報収集段階の見込み客に対して、自社専門分野の知識と情報を提供するセミナーは、情報の質次第ではその後の商談まで自社誘導で進めることができる大きなチャンスです。
特に有料の場合は質の高い見込み客だけを集めることができるため、外部講師を招いて関連するテーマで講演や対談をするなど、コンテンツに工夫してセミナーそのものの魅力を相乗的に上げることで集客します。
【セミナーのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・興味関心の高い見込み客に対して1対nで訴求できる ・商材の魅力を最大限に伝えられる ・見込み客の信頼を得られる | ・日程や開催場所の制限を受ける ・集客できてもできなくても開催費が発生する |
【セミナーの費用目安】
自社内会議室で担当者自身がセミナーを行える場合は、セミナー後の懇親会費だけで済むでしょう。しかし素人がただ商材の説明だけをするといった内容では、セミナーの魅力に乏しく集客効果が望めません。
見込み客の興味関心に合わせたコンテンツ作りが社内でできるのであれば、外部講師への依頼料を捻出します。
自社内でセミナー開催を手がけられる人員がいない場合は、企画から集客まですべて外注することも可能です。
人数や会場規模、講師への謝礼、事務局の運営などで大きく異なってきますが、およそ30名規模で安くて50万円、高ければ100万円ほどかかる場合があります。
有料セミナーであれば開催費を参加費で補うこともできるため、見込み客にとってどれだけ魅力的なコンテンツに高められるかが鍵になります。
2-13.【プル型】交流イベント
社員と既存客、見込み客の交流を目的としたイベントは、参加者にとっても気軽に足を運ぶことのできる機会です。既存客のファン化と、最初からある程度ファン化の進んだ見込み客を集客することができます。現場担当者同士ならではの話を盛り上げたり、既存客に対して日頃からどんなフォローをしているかを見せたりすることで、自社の姿勢や商材の魅力を相手に気負わせることなくアピールできる場になります。
【交流イベントのメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・ターゲットが気軽に参加できる | ・効果測定が難しい ・わかりやすい効果が出るまでに時間がかかる |
【交流イベントの費用目安】
軽食を用意したり、工場見学会をしたり、自社内外で交流だけを目的としたイベントであれば、さほど費用はかかりません。3〜5万円程度の予算で開催できるでしょう。参加記念のお土産としてノベルティを配るなど、参加者が記憶を振り返り、人に口コミしやすい仕掛けを用意することが大切です。
2-14.【プル型】紹介
個人事業主や小規模事業主をターゲットにしている場合は、既存客に対して常に「紹介」を依頼しておくことで、既存客自身のネットワークを頼ることができます。
もちろん、その顧客自身が自社や商材に満足している場合に限りますが、BtoC商材のように口コミが大きく影響する規模ではぜひ活用したい手法です。
【紹介のメリットとデメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・確度の高い見込み客に出会える | ・良くも悪くも既存客とタイプが似る傾向がある |
【紹介の費用目安】
紹介を依頼すること自体には、何も費用は発生しません。キーパーソンとなりそうな人物を日頃から押さえておき、話の流れを掴んで紹介を依頼します。
BtoCではよくありますが、紹介について報酬を支払うなどの柔軟な考え方を取り入れても良いでしょう。
3.【ケース別】おすすめのアプローチ戦略
ご紹介した14のアプローチ手段は、どれかひとつだけを実行すればいいものではなく、組み合わせて行うことで相乗効果を狙うことができます。
手段の組み合わせは予算や目的に合わせて無数にありますが、ここでは特に以下のケースにおける戦略の一例をご紹介します。
・コストを抑えたい場合
・短期で一気に集客したい場合
・ブランド構築したい場合
あくまで一例になりますが、ひとつずつ詳しく解説していきます。
3-1.コストを抑えたいならテレアポ×メール営業で数を打つ
コストを押さえながらも多数の新規顧客にアプローチしたいのであれば、テレアポとメール営業が効果的です。
成功への近道は、営業個人の属人的要素に任せることではなく、部署全体で戦略として底上げをすることです。事前にしっかりとスクリプトや流れの確認を部署全体で行い、成功事例の共有などで改善を重ねることが、地道ながらも高い費用対効果を生み出します。
外注する場合は、競合との差別化をできるだけ明確にしておくことが鍵になります。
3-2.短期で一気に取りたいならインターネット広告×セミナーで認知拡大&育成
少し予算をかけられるのであれば、リスティング広告で興味関心のあるターゲットをしっかりと狙い、セミナーを開催します。
情報収集段階のターゲットに対して、専門知識や技術、ノウハウや一次情報を提供することで競合との差別化を図り、顔を合わせる機会を設けることで信頼を得ます。
早い段階から見込み客の育成をするため、リスティングの内容をできるだけ精査して、一気に行動に移ることが重要です。
3-3.ブランド構築したいならSEO対策×プレスリリースでじっくりと
指名買いを促すには、良質な情報をターゲットとメディアの両方に発信し続けることが肝になります。
ホームページではターゲット向けのコンテンツを発信し、メディアに対しては自社専門分野に関しての一次情報を提供し続けることで、その道の第一人者としての地位を築きます。
自社のポジションをしっかりと狙った市場の第一位におくことができれば、価格競争に巻き込まれることも少なくなるでしょう。
最低でも半年から1年の時間がかかる方法ですが、その後の利益率や交渉を考えれば、決して無駄な投資にはならないでしょう。
4.インバウンド整備なくして新規顧客の獲得はできない
さまざまな手法を組み合わせてターゲットにアプローチしても、受け皿がなければ顧客にはなりません。
実は新規顧客の開拓で重要になってくるのが、インバウンドの整備です。
インバウンド(Inbound)とは、直訳すると「本国行きの」という意味で、主に日本の観光業界で「訪日旅行」「訪日外国人観光」という意味で使われている言葉です。
外国人が日本に求めるモノや体験を、より魅力的な形で提供し、おもてなししようとするもの。
マーケティングの世界でも同様に、自社(=インバウンド)と接点を持ったりホームページ等を訪れたりした人に、何を見てもらい、どんな体験をしてもらうかを検討し、積極的に自社への導線を作っていくことを「インバウンドマーケティング」と言います。
インバウンドを充実させることで、見込み客に対しては商材への期待感を高め、既存客に対しては満足度を高めることができます。
新規顧客の開拓と言うと、ついリストの件数やすぐに結果の見えるアポイント率などに左右されがちですが、実はインバウンドの整備なくしては、どんなアプローチもザルになってしまうのです。
まとめ
今回は、新規顧客の開拓方法を5つのステップに分けて解説しました。
1.ターゲットを明確にする
2.アプローチ方法を決める
3.潜在顧客へのメッセージを決める
4.見込み客を育てる
5.反応の高い見込み客に営業する
商材ありきの旧来のBtoBのやり方ではモノは売れなくなっているため、ペルソナをしっかり想定し、さまざまな方法を組み合わせてアプローチすることが大切になっています。
そして商材の性質や自社の持ち物を活かし、見込み客の段階から丁寧にファンを作っていくことで、その後の新規顧客へのステージアップが効率よく行えるのです。
ファンを作るためのインバウンドの充実は、単に見込み客に対するアピールのためだけでなく、企業や製品の専門性や誠実さの理解を促し、ブランドを作る効果があります。長期的な資産になるものなので、ぜひ運用していきましょう。
この記事が、あなたの新規顧客開拓のお役に立てますように。