
「中小企業経営者だが、資金調達の方法が知りたい」
「新型コロナで経営が傾いてしまったので、補助金など優遇制度を受けたい」
中小企業経営者の方で、そんな希望を持っている人も多いでしょう。
事業資金の調達方法はさまざまある中で、特に中小企業に適した方法というのはたしかにあります。
たとえば、
・日本政策金融公庫の中小企業向け融資
・助成金、補助金
・ファクタリング
などです。
特に、国の政策や事業である日本政策金融公庫や各種助成金などは、中小企業の支援を目的としているため、融資や支給を受けやすい、金利が低いなどメリットも多いものです。
中小企業経営者としては、優遇制度を十分に知って利用したいものです。
そこでこの記事では、中小企業の資金調達について知っておきたい基礎知識や優遇制度について、わかりやすく解説します。
まず最初に、
◎中小企業の資金調達の現状
◎中小企業が資金調達しやすくなるポイント
を説明し、それを踏まえて、
◎中小企業の資金調達方法
◎コロナ関連の優遇制度
について、具体的に紹介します。
最後まで読めば、中小企業経営者としてどのように資金調達すればいいか、最適な方法が見つかるはずです。
この記事をもとに、あなたの会社が必要な資金を調達できるよう願っています。
1. 中小企業の資金調達の現状
そもそも中小企業の資金調達は、現状ではどのように行われているのでしょうか。
その傾向や課題について考えてみましょう。
1-1. 中小企業の資金調達は融資が中心
まず、中小企業がどのように資金調達しているのか、データから見てみましょう。
(出典:「中小企業における資金調達の課題 ~売掛債権担保及び動産担保の活用に向けて~」経済産業委員会調査室 上原 啓一)
【中小企業と大企業の資金調達構造】

【中小企業向け貸出金担保の内訳】

上の棒グラフは、中小企業と大企業がそれぞれどのような資金調達をしているか、手段ごとの割合を示したものです。
これを見ると、大企業に比べて中小企業の資金調達は、借入金に頼る割合が大きくなっていることがわかります。
つまり、金融機関からの融資が、中小企業の主な資金調達手段だということです。
そして下の円グラフは、中小企業が融資を受ける際に何を担保にしているか、という統計です。
実に85%以上の融資は不動産を担保としていて、圧倒的に多くなっています。
実はこの構造は、中小企業の資金調達に関する問題点、課題につながっています。
次項では、それについて解説しましょう。
1-2. 中小企業の資金調達の課題
中小企業の資金調達は、金融機関からの借り入れに頼っていることがわかりました。
ではその状況で、何が問題なのでしょうか?
現在、中小企業の資金調達で課題となっていることを3点あげてみました。
1-2-1. 借入がしにくい
中小企業にとっては、金融機関からの融資が資金調達の中心ですが、反対に銀行などの金融機関から見れば、中小企業はかならずしも優良な融資先とは限りません。
というのも、中小企業は大企業に比べて経営が安定しないことも多いためです。
返済能力や信用度において大企業に劣ると判断されるので、積極的に融資する対象ではないのです。
そのため、借り入れに頼っているのに借り入れしづらいというジレンマがあります。
これを解決するには、事業を成長させて収益を上げ、金融機関からの信用を高めていく努力が必要です。
1-2-2. 企業情報が金融機関に伝わりにくい
大企業の場合、財務状況などの情報は広く公開されています。
そのため金融機関側も経営状態を把握でき、融資の判断がしやすくなります。
一方で中小企業は、経営状態などが外からはわかりづらいものです。
金融機関からすれば、経営が不透明であれば安心して融資はできません。
そこで、中小企業としては、積極的に自社の情報を開示していく必要があります。
財務データなどもきちんと整理して、必要があればいつでも説明できるようにしておきたいものです。
1-2-3. 担保を用意しにくい
大企業よりも貸し倒れリスクが高いと判断されがちな中小企業の場合、金融機関は融資の条件として担保を求めることが多くあります。
その場合、前項の統計でもあったように、不動産を担保にするケースが圧倒的ですが、そもそも不動産を所有していない中小企業も多いでしょう。
となると、無担保では融資を受けられなくなってしまいます。
担保にできるような資産を持たない場合は、やはり事業の収益性を上げて、金融機関からの信用を積み上げることが必要です。
2. 中小企業が資金調達しやすくなるポイント
前述したような課題を解決して、中小企業が資金調達を成功させるにはどうすればいいのでしょうか?
この章では、資金調達の際に心掛けるべきポイントを挙げておきましょう。
2-1. 事業規模に合わせて金融機関を選ぶ
まず、融資を申し込む金融機関は、自社の事業規模に合ったところを選ぶことです。
大企業はメガバンクから借り入れますが、中小企業は地方銀行や信用金庫、信用組合にアプローチするといいでしょう。
特に信金・信組は、地域振興、地域経済の発展のために、地元の中小企業をさまざまな面からサポートしてくれます。
中小企業向けの融資を積極的に行うのはもちろん、経営相談などにも親身にのってもらえるので、日ごろから付き合いを深めておくことをおすすめします。
2-2. 綿密な事業計画書をつくる
融資にはかならず審査があります。
その際には、決算書で経営状態や支払い能力を確認するなどさまざまな要素がチェックされますが、中でも重視されるのが事業計画書です。
この内容を綿密に練りこむことで、融資を受けられる確率が上がります。
具体的には、
・実現性の高い事業計画を立てる
・売り上げ目標、利益目標などは具体的な数字で示す
・マーケティングリサーチを徹底して、計画に説得力を持たせる
などがポイントです。
事業計画書の内容が充実した説得力あるものになっていれば、もし決算書の内容があまりよくなくても融資が通る可能性もあります。
2-3. 自社の強みをアピールする
融資相談や審査での面談など、金融機関の担当者と話す際には、自社の強みや魅力を最大限にアピールするのも大切です。
商品やサービスの特徴、新しさ、事業の将来的な展望、社会に対して以下に貢献するかなどを伝えてください。
その際は、抽象的な夢ばかり語るのではなく、具体的な数値や事例などを提示して説得力あるアピールを心がけましょう。
3. 中小企業の資金調達10の方法
では、実際に中小企業が資金調達できる方法にはどんなものがあるのでしょうか?
大きくわけて、
◎融資
◎出資
◎その他
の3種があり、それぞれに具体的な方法が含まれます。
ここでは代表的な10の資金調達法を挙げていきましょう。
それぞれを利用するメリット、デメリットも解説しますので、比較してみてください。
3-1. 融資
まず、金融機関からの融資です。
中小企業に適した融資はいろいろとありますが、代表的なものを挙げました。
3-1-1. 日本政策金融公庫の融資
メリット | デメリット |
---|---|
・金利が低い・無担保、無保証で融資が受けられる ・融資限度額が大きい | ・審査に日数がかかる ・審査はやや厳しい ・必要書類が多い |
日本政策金融公庫は、政府系金融機関です。
営利を追求する民間の金融機関とは異なり、国の政策にもとづいて、中小企業や小規模事業者をさまざまな制度で支援しています。
日本政策金融公庫の融資の特徴は、
◎低金利:およそ0.30~2.80%、災害貸付などの場合は0.05%~が適用される場合もあり
◎無担保・無保証
◎融資限度額が大きい:おおむね7億2,000万円、それ以上もあり
ということです。
審査のハードルも高くはありませんが、ただ申請に必要な書類が多く、融資審査では面談も重視されます。
申請前には綿密な準備が必要です。
くわしくは、日本政策金融公庫の公式ホームページも参照してください。
3-1-2. 信用保証協会の保証付き融資
メリット | デメリット |
---|---|
・審査は銀行の直接融資より通りやすい ・金利は比較的低め | ・保証料がかかる ・審査に日数がかかる |
中小企業にとって、銀行や信用金庫などの金融機関から直接融資を受けるのは、ハードルが高いものです。
金融機関としては、大企業に比べて経営が安定しない中小企業は、貸し倒れリスクがあると判断されてしまうからです。
そこで、信用保証協会に保証をしてもらうことで、金融機関の融資審査を通りやすくします。
もし融資を受けた中小企業が返済できなくなったり、倒産したりした場合は、融資の残債を信用保証協会が弁済してくれます。
保証を付けてもらうため、信用保証協会に保証料を支払う必要がありますが、
◎金利は比較的低め
◎審査のハードルが低い
という特徴があるので、中小企業が資金調達する際に非常によく利用されています。
3-1-3. 不動産担保による融資
メリット | デメリット |
---|---|
・無担保よりも多額の融資を受けられる・支払い期間を長くできる | ・担保の評価に時間がかかる・返済できなければ不動産を失う |
中小企業が融資を受けるには、金融機関から担保を要求されることもあります。
そこで、不動産を担保にするケースが多いようです。
自社が持っている土地や建物を担保にして融資を受けることができます。
担保があると、無担保の場合に比べて、
◎融資額が上がる
◎支払い期間を長くできる
というメリットがあるので、もし不動産を持っているなら有利な融資を受けられるでしょう。
ただ、もし返済できなくなれば、不動産自体の権利を失うことになりますので、返済計画をしっかり立てておく必要があります。
3-1-4. 経営者保証による融資
メリット | デメリット |
---|---|
・無担保で融資を受けられる | ・返済できなければ経営者や家族個人の資産を失う |
融資を受ける際に、その企業の経営者や家族個人が連帯保証をする「経営者保証」という融資方法もあります。
◎無担保でも融資を受けられる
ため、中小企業ではよく利用される融資です。
が、一方で、もし経営に行き詰って返済ができなくなれば、経営者や家族個人の資産を失ってしまうため、生活そのものがなりたたなくなるおそれがあります。
そこで、金融庁、中小企業庁、日本商工会議所、全国銀行協会が協力して「経営者保証に関するガイドライン」を作成しました。
この中で、
・法人と個人が明確に分離されている場合は、経営者の個人保証を求めない
・多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際には、一定の生活費を残して、「華美でない」自宅に住み続けられるよう検討する
・保証債務を履行するときに、返済しきれない債務残額は原則として免除する
など、経営者個人に負担がかかりすぎないような保証のありかたが勧められています。
経営者保証を求められた場合は、このガイドラインに沿った形で融資してくれるよう、金融機関に確認しましょう。
3-1-5. 動産担保融資
メリット | デメリット |
---|---|
・不動産がなくても担保融資を受けられる・経営者個人が保証する必要がない | ・金融機関に定期的に担保状況を報告しなければならない・取引先からの信用にかかわる |
担保となる不動産がないなどの場合に、「動産」を担保にして融資を受けることもできます。
たとえば、商品の在庫や、これから回収予定の売掛債権などを担保にします。
これにより、
◎不動産をもっていない企業でも、担保融資が受けられる
◎経営者個人がリスクを負って保証をする必要がない
ため、近年推奨されている融資です。
恒常的に商品在庫や売掛債権を抱えているような事業形態の企業の場合、つねに運転資金が必要になってしまいますが、それを担保として融資を受けることで、資金繰りを健全化することができます。
一方で、担保にした在庫や売掛がどのような状況か、融資元の金融機関に定期的に報告しなければならないという手間があるのが難点です。
また、取引先などに知られると、「そこまで資金繰りが苦しいのか」と、企業としての信用度が下がってしまうおそれもあるので要注意です。
3-2. 出資
第三者から資金を提供してもらう「出資」も、融資と並んで資金調達の王道です。
そこで、中小企業向けの出資を2種類挙げておきましょう。
3-2-1. ベンチャーキャピタルからの出資
メリット | デメリット |
---|---|
・出資金は返済する必要がない・経営のアドバイスやサポートを受けられる | ・上場を目指す企業のみが対象・経営に過度に干渉される場合がある |
中小企業の中でも、いわゆるベンチャー企業に投資する投資専門の企業が「ベンチャーキャピタル」です。
事業の内容や経営状態がいいと認められれば、積極的に出資してもらえます。
◎出資されたお金は返済の必要がない
◎ベンチャーキャピタル自体が経営の専門家なので、経営に関するアドバイスやサポートが得られる
というメリットもあります。
ただ、これから成長が期待される事業や企業を見出して出資し、のちにその企業が上場したりM&Aされたりした際にキャピタルゲインを得て利益を上げるのが目的なので、上場を目指さない企業は基本的に出資の対象になりません。
また、交渉をうまく運ぶことができなければ、こちらに不利な条件での契約になったり、出資後に経営に過度に干渉されるおそれもあるので要注意です。
3-2-2. エンジェル投資家からの出資
メリット | デメリット |
---|---|
・短期間で出資してもらえる・経営アドバイスや人脈の紹介もしてもらえる | ・経営に過度に干渉されるおそれがある |
「エンジェル投資家」とは、将来有望と思われる企業に投資する個人投資家です。
ベンチャーキャピタルと同様のことを、個人で規模を小さくして行っている、と考えればいいでしょう。
個人であるため、
◎出資の決定、資金提供が早い
◎経験にもとづいた経営アドバイスや、豊富な人脈の紹介などもしてくれる
といった利点があります。
その反面、経営に干渉されて、理想通りの企業経営ができなくなるケースもあります。
3-3. その他
融資と出資以外にも、中小企業が事業資金を調達する方法はあります。
公的な助成金や補助金を受ける、ファクタリングやクラウドファンディングを行う、などです。
この章では、それらについても説明しておきましょう。
3-3-1. 助成金・補助金
メリット | デメリット |
---|---|
・返済する必要がない | ・かならず自社に合った募集があるとは限らない・募集期間が短い |
国や自治体、民間団体などが、中小企業支援のために出している助成金や補助金も利用できます。
これらは、
◎返済の必要がない
◎経済危機や災害などの際には、支援のために特別な助成金・補助金が出ることが多い
など、中小企業にとっては心強い味方です。
特に新型コロナウイルスのために経営が悪化した企業を救済するため、特別な助成金、補助金制度がさまざまつくられていますので、ぜひ利用したいところです。
ただ、自社が応募条件にかなっている助成金、補助金があるかどうかはタイミングによりますし、募集期間が短いものが多いので、つねにどんなものがあるか情報をチェックしておく必要があります。
助成金や補助金の情報を集めるには、以下のサイトがおすすめです。
◎経済産業省・中小企業庁 中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」
◎公益財団法人 助成財団センター公式ホームページ
3-3-2. ファクタリング
メリット | デメリット |
---|---|
・審査のハードルが低い・返済の必要がない・無担保、無保証で利用できる | ・手数料が高額・調達できる金額は売掛債権の金額まで |
ファクタリングは、企業が持っている取引先への売掛債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらって現金化する方法です。
融資とも出資とも異なり、自社が今持っている資産=売掛債権を資金化するため、
◎返済の必要がない
◎無担保・無保証
◎審査のハードルが低い
というメリットがあります。
たとえば本来なら、数か月先まで待たないと入金されない売掛金が、すぐに現金として手元に入るので、利用したいと考える人は多いでしょう。
が、売却時にはもちろん売掛金の満額がもらえるわけではなく、そこから手数料がひかれます。
この手数料が高く、売掛債権額の10~20%が相場といわれています。
中には30%という高率の手数料を取る業者もあるので要注意です。
さらに、売却によって手に入る金額は、売掛金額以下にしかなりません。
ですので、多額の資金が必要であっても、もっている売掛債権が少なかったり、ファクタリング業者の手数料が高かったりすると、希望額に満たないケースもある、ということを知っておいてください。
3-3-3. クラウドファンディング
メリット | デメリット |
---|---|
・返済の必要がない・どんな事業、企業でも実施することができる | ・十分な資金が集まないケースも多い・公開した事業や計画を、他社に模倣されるおそれがある |
クラウドファンディングは、インターネットを利用した資金調達法です。
新しい事業やビジネス、プロジェクトなどをネット上に公開して、それに賛同する人や興味を持った人、支援を希望する人から資金を集めます。
近年はクラウドファンディング専用のプラットフォームサイトも複数あり、そこで誰でも簡単に募集ができるようになってきました。
この方法の特徴は、
◎出資された資金は返済の必要がない
◎誰でも簡単に募集できる
という点です。
ただし、その事業やプロジェクトに魅力がなければ、必要な資金は集まりません。
実際、希望額を達成できる率は、平均で30~40%程度といわれています。
また、新しい画期的な事業や製品を思いついたとしても、クラウドファンディングでその計画を公開したことで、もっと資金力のある他社に先に実現されてしまうおそれもありますので、実施は慎重に行ってください。
4. コロナ関連の優遇制度
現在、新型コロナウイルスのために経営状態が悪化している中小企業も多いでしょう。
そんな企業の資金調達を支援するために、さまざまな優遇制度が実施されています。
この記事ではその中から、日本政策金融公庫の融資制度を紹介しておきましょう。
中小企業向け融資制度 | 融資限度額 | 金利 |
---|---|---|
新型コロナウイルス感染症特別貸付 | 直接貸付 6億円(別枠) | 基準利率:1.10~1.30%ただし、2億円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.9%、4年目以降は基準利率 |
新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付 (新型コロナ対策資本性劣後ローン) | 直接貸付 7億2千万円(別枠) | ご融資後3年間は0.50%ご融資後3年経過後は、毎年直近決算の業績に応じて、0.50~2.95% |
経営環境変化対応資金 (セーフティネット貸付) | 直接貸付 7億2千万円 | 基準利率:1.10~1.30%(長期運転資金に限り、上限3%) |
(2020年12月現在)
ただ、コロナ関連の制度はたびたび更新・変更されます。
くわしくは、日本政策金融公庫の公式ホームページを確認してください。
5. まとめ
いかがでしたか?
中小企業の資金調達について、知りたいことが十分にわかったことと思います。
では最後にもう一度、記事の要点をまとめてみましょう。
◎中小企業の資金調達は融資が中心
◎中小企業に適した融資は、
・日本政策金融公庫からの融資
・信用保証協会の保証付き融資
・不動産担保融資
・経営者保証融資
・動産担保融資
これらをふまえて、あなたの会社が必要な資金を十分に調達できるよう願っています。