
「個人事業主でも事業資金を調達できる方法が知りたい」
「融資審査に通りやすくなるにはどうすればいい?」
個人事業主の中には、事業の資金を調達する必要があって、そんな希望や疑問を抱いている人もいるでしょう。
実際に、個人事業主が資金調達できる方法はいろいろとあります。
たとえば、
- 金融機関からの融資
- 助成金、補助金
- クラウドファンディング
などです。
そこでこの記事では、個人事業主の資金調達について知っておくべきことを網羅しました。
まず、
◎個人事業主でも資金調達できる8つの方法
◎そのメリット、デメリット
をくわしく解説します。
さらに、
◎個人事業主が資金調達に成功するポイント
◎個人事業主が資金調達する際の注意点
も挙げました。
最後まで読めば、個人事業主として資金調達する方法がわかるはずです。
この記事をもとに、あなたが必要な資金調達に成功するよう願っています。
1. 個人事業主でも資金調達できる8つの方法

個人事業主が資金調達できる方法はさまざまです。
銀行などの金融機関から融資を受けるのはもちろん、助成金をもらう、出資をつのるなど、8つの資金調達法を以下に挙げました。
まずはそれぞれの概要を比較表にまとめましたので、以下を見てください。

では、それぞれについて説明していきましょう。
1-1. 金融機関から融資を受ける
まず資金調達として最初に思いつくのは、銀行など金融機関からの融資でしょう。
個人事業主が借り入れできる金融機関は、大きくわけて、
◎日本政策金融公庫
◎信用金庫
◎銀行
◎ノンバンク
の4種があり、それぞれに特徴があります。
1-1-1. 日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫
金利 | およそ0.30~2.80% |
限度額 | おおむね4,800万円 |
借りやすさ | やや借りやすい |
「日本政策金融公庫」は、政府系金融機関です。
2008年、それまであった国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫の3つを統合して生まれました。
- 小規模事業者(個人事業主含む)
- 中小企業
を対象にして、さまざまな融資制度を設けて支援しています。
その特徴は、
◎低金利:およそ0.30~2.80%、災害貸付などの場合は0.05%~が適用される場合もあり
◎無担保・無保証
◎融資限度額が大きい:おおむね4,800万円、それ以上もあり
というところにあり、融資審査さえ通ればぜひ借り入れしたい金融機関です。
中でも個人事業主が利用できる制度をいくつかピックアップしてみました。
以下の表を見てください。

特に「一般貸付」はほぼどんな事業にでも適用されるので、まず最初に利用を検討してみるといいでしょう。
ただ、公的機関であるため審査は比較的厳しく、申請に必要な書類も多いため、融資のハードルは低いとはいえません。
事業計画書などの書類や、面談での対応を入念に準備して臨みたい融資です。
1-1-2. 信用金庫・信用組合の融資
信用金庫
金利 | およそ2.0~4.0% |
限度額 | 場合により異なる |
借りやすさ | 借りやすい |
信用金庫は地域密着型の金融機関です。
同じ民間の金融機関でも、銀行が営利を追求するのに対し、信用金庫は地域の住民や事業者が会員となって、お互いに助け合うことを目的とした協同組織です。
そのため、個人事業主を含む小規模事業者や中小企業に手厚い支援を行っています。
したがって、個人事業主でも融資を受けやすいという利点があります。
また、特徴としては、
◎金利は比較的低め:2.0~4.0%程度
◎審査は銀行よりゆるめ
◎経営相談など融資以外の支援も受けられる
といったことが上げられます。
金融機関の中で融資審査がもっとも厳しいのは銀行ですが、それに比べると信用金庫の審査はハードルが低めで、銀行融資に落ちた人でも借り入れできる可能性があります。
ただそのかわり、銀行よりも金利が少し高く、融資限度額も小さいという難点があります。
融資を申し込む前に、まずは地域の信用金庫に相談してみるのがおすすめです。
1-1-3. 銀行の融資
信用金庫
金利 | およそ1.0~3.0%(長期はもっと高利率) |
限度額 | 銀行ごと、融資を受ける企業ごとに異なる |
借りやすさ | 借りにくい(審査が厳しい) |
資金調達と聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは銀行でしょう。
実際に銀行の融資にはメリットがいろいろあります。
たとえば、
◎金利は日本政策金融公庫と同様に低い:1.0~3.0%程度、ただし長期返済になると利率は上がる
◎融資限度額が大きい
◎融資を受けられれば事業者として信用度が上がる
などです。
ただ、最大のネックはその審査の厳しさです。
金融機関4種の中ではハードルがもっとも高く、個人事業主で審査に通過するのは、経営状態が良好なケースだと言われています。
そのため、銀行融資を受けられた事業者は、信用度が上がってその後の取引にも有利に働く、と言われるほどです。
もし黒字経営が続いている優良事業者であれば、銀行融資に申し込んでみるのもいいでしょう。
審査に通れば、低金利での融資と信用力とを同時に手に入れることができますよ。
1-1-4. ノンバンクのビジネスローン
ノンバンクのビジネスローン
金利 | およそ3.0~18.0% |
限度額 | 500万~1,000万円程度 |
借りやすさ | 借りやすい |
最後に、ノンバンクのビジネスローンについて説明します。
ノンバンクとは、銀行などと異なり預金業務を行わず、融資業務だけに特化した金融機関です。
代表的なのは消費者金融で、金融機関4種の中でもっとも融資審査がゆるく、借りやすいとされています。
特徴を挙げると、
◎審査はもっともハードルが低く、他の金融機関で借りられなかった場合でも借りられる可能性がある
◎審査日数が短く、最短即日で融資を受けられる
◎店舗に行かず、WEBで申し込みから融資まで完結できる業者もある
といったところです。
ただ、ノンバンクには大きなデメリットがあります。
それは、金利が非常に高いということです。
多くのノンバンクでは、最高金利を17~18%程度に設定しています。
そのため、借り入れる前には、返済計画をきちんと立てておく必要尾があるでしょう。
1-2. 自治体の制度融資を受ける
自治体の制度融資
金利 | およそ1.0~3.0% |
度額 | 500万~3,000万円程度 |
借りやすさ | 借りやすい |
実は、都道府県や市区町村といった自治体の中にも、融資制度を持っているところがあります。
「制度融資」と呼ばれますが、実際には自治体から直接融資をするわけではありません。
自治体が中心となって金融機関と連携し、信用保証協会の保証付きで融資を行います。
その特徴は以下です。
◎金利が低い:およそ1.0~3.0%程度
◎審査のハードルが低い
◎いろいろな経営支援も受けられる場合がある
自治体の制度という特性上、地元事業者が融資を受けやすいように、金利が低く、融資審査は通りやすくなっています。
そのため個人事業主にも借りやすい融資制度です。
ただ、自治体によっては制度融資がないところもあるので、まずは地元自治体に問い合わせてみましょう。
1-3. 助成金・補助金をもらう
助成金・補助金
金利 | なし |
度額 | 制度により異なる |
借りやすさ | 制度による |
政府や地方自治体、民間団体などが出す助成金・補助金をもらうという方法もあります。
その特徴は、
◎返済の必要がない
◎種類が多いので自分が対象になるものが見つかりやすい
◎支給されれば信用度が上がる
などです。
なんといっても、融資と違って返済の必要がないのが助成金・補助金の利点です。
また、助成金や補助金にも審査があるので、支給が決まれば「経営が優良」と認められたことになり、事業者としての信用がアップします。
融資と併用することも可能ですので、融資申請と並行して申請するといいでしょう。
どんな助成金、補助金が受けられるか知りたい場合は、以下のサイトで検索してみましょう。
◎経済産業省・中小企業庁 中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」
◎公益財団法人 助成財団センター公式ホームページ
◎みんなの助成金
◎J-Net21
1-4. クラウドファンディングを行う
近年では、クラウドファンディングで資金を集めるケースも増えています。
「クラウドファンディング」とは、インターネット上で事業のプロジェクトを公開し、主旨に賛同した一般の人たちから出資をつのる仕組みです。
まずはプロジェクトの内容、出資を集める目標金額、出資者に対する「返礼」を何にするかなどを決めます。
次に、クラウドファンディング専門サイトなどに自分の事業やプロジェクトを掲載し、募集を開始します。
目標金額に達したら、それを資金として事業やプロジェクトを立ち上げる、という流れで行います。
この仕組みならではの特徴は、
◎集まった資金は返済の必要がない(ただ、多くの場合何らかの商品やサービスなどの返礼がある)
◎融資審査には通らなかった事業やプロジェクトでも、一般から広く興味を持たれれば出資を集めることができる
◎目標金額は自分で設定できる
といったところです。
銀行員のおめがねにはかなわなかったユニークな事業でも、一般にアピールすることができれば短期間で多くの資金を集めることもできるのです。
ただ一方で、多くのプロジェクトは目標額に及ばず、実現できずに消えていくのもまた現実です。
また、企画を事前に公開することで、資金力のある企業に先に模倣されてしまうおそれもあります。
1-5. 家族や知人から借りる
人事業主の場合、必要な資金を家族や知人から借りるというケースも考えられます。
◎煩雑な申請手続きなどがいらない
◎借入額は相手の資金力次第で、限度額が決められていない
◎金利や返済期間も自由に決められる
◎承諾されれば当日すぐに借りることもできる
といった点が、ほかの資金調達法との違いです。
もしこの方法をとる場合は、かならず借用書をつくり、返済方法を含めて公正証書にしておきましょう。
あいまいにすると人間関係に溝ができるおそれがありますし、会計処理の上でも証書があれば明確に帳簿がつけられます。
2. 個人事業主が資金調達に成功するためのポイント

ここまでさまざまな資金調達法を挙げてきました。
が、ひとつ言えるのは、やはり個人事業主は法人に比べて信用度では劣る傾向があり、したがって融資などはハードルが高めになるということです。
逆に言えば、信用度を上げれば資金調達はより成功に近づきます。
そこでこの章では、個人事業主が資金調達に成功するためのポイント、信用度を上げる方法を3つ挙げました。
2-1. 開業届を提出する
個人事業主の中には、開業届を出さずに事業を営んでいる人も多くいます。
が、信用を得るためには、開業届をかならず提出しましょう。
「開業届とは何?」という人のために、簡単に説明します。
「開業届」=「個人事業の開業・廃業等届書」とは、所得税法第229条で定められた手続きで、新たに事業を開始したり、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき、あるいは事業を廃止したときに、税務署に届け出るものです。
個人事業主、フリーランスであっても届け出は必要で、原則として事業開始から1か月以内に提出するよう定められています。
が、罰則などがないため、届け出なしで事業を始めたり、届け出が必要なことすら知らずに開業している人もいるのです。
しかし、個人事業主が融資を受けようとするなら、この開業届はぜひ提出してください。
きちんと確定申告をして納税するためには、開業届が必要だからです。
2-2. 青色で確定申告する
次に、確定申告は白色ではなく青色にしてください。
青色のほうがより厳密に帳簿をつける必要があるため、事業者として信用度が高まるからです。
個人事業主が融資を申し込む際には、確定申告書の提出が求められます。
その際に、白色ではなく青色を提出できれば、審査にプラスに働くと予想されます。
青色申告をするためには、開業届を提出していることが必要なので、このふたつはセットで行いましょう。
2-3. 必要書類を十分に準備する
また、融資を申し込む際には、必要な書類をすべて揃え、事業計画書などは内容を十分に練って作成することです。
申請書類は、審査の重要な判断基準になります。
もし不足があれば、審査に時間がかかったり、場合によっては融資不可の判断につながりかねません。
信頼できる事業者だということを示すためにも、書類の不備は避けましょう。
3. 認定支援機関を利用するのがおすすめ

さて、低金利で多額の融資を受けられる日本政策金融公庫ですが、実はその融資審査に通りやすくなる方法があります。
それは、「認定支援機関」を利用することです。
「認定支援機関」とは、正式名称を「経営革新等支援機関」といい、中小企業や小規模事業者が安心して経営相談などができるよう、一定レベル以上の専門知識や実務経験をもつものに対して、国が認定した機関です。
たとえば、商工会や商工会議所、地域金融機関などの機関から、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士といった士業などがこの認定を受けています。
この認定支援機関に相談すると、融資に必要な事業計画書の作成をサポートしてもらうことができます。
さらに、認定支援機関を通して日本政策金融公庫の融資に申し込むと、信用度が上がって審査に通る確率が高くなると言われているのです。
最寄りの認定支援機関は、中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」の「認定支援機関 早わかりガイド」で調べることができます。
日本政策金融公庫の融資を希望するなら、ぜひ相談してみてください。
4. 個人事業主が資金調達する際の注意点

個人事業主が有利に資金調達するための方法を、いろいろな面から検証してきましたが、最後に知っておきたいのは注意点です。
融資の申し込みや助成金の申請などの際に、気を付けるべきことを挙げておきます。
4-1. 審査に時間がかかる場合がある
まず、資金調達の方法によっては、審査に時間がかかることを知っておきましょう。
「なるべく早く資金がほしい」「1週間以内に運転資金を用意しないと、支払いができない」
といった切羽詰まった状況もあるかもしれませんが、すぐに資金が手元に入る方法は数多くはありません。
時間がかかるものを挙げておくと、
◎日本政策金融公庫
◎信用金庫
◎銀行
◎自治体の制度融資
◎助成金・補助金
◎クラウドファンディング
です。
逆に、時間がかからず、場合によっては即日資金調達も可能なのが、
◎ノンバンクのビジネスローン
◎家族や知人からの借り入れ
です。
金利が低い融資など、条件のいい資金調達を目指すなら、余裕をもって早めに申し込みをしておきましょう。
4-2. 最高金利に近い金利での借り入れを想定しておく
金融機関での融資を受ける場合、金利にはたいてい最低金利から最高金利までの幅があります。
たとえばノンバンクのビジネスローンだと、
- 3.1~18.0%
- 6.0~17.80%
- 6.3%~17.8%
- 12.0%~18.0%
など、最大で約15%もの開きがあるのです。
この場合、「うまくいけば、最低金利に近い金利で借りられるはず」と楽観的に考えたくなるでしょうが、それは危険です。
特にノンバンクの場合、最高金利に近い金利を設定されることが多いようです。
融資を検討する際には、「最高金利に近い金利になっても、返済できるかどうか」をシミュレーションしておきましょう。
5. まとめ
いかがでしたか?
個人事業主がどのように資金調達すればいいのか、よく理解できたかと思います。
では、記事の要点を振り返ってみましょう。
◎個人事業主が資金調達できる方法は、以下の8つ
- 日本政策金融公庫の融資
- 信用金庫の融資
- 銀行の融資
- ノンバンクのビジネスローン
- 自治体の制度融資
- 助成金、補助金をもらう
- クラウドファンディング
- 家族や知人から借りる
◎個人事業主が資金調達に成功するためのポイントは、
- 開業届を提出する
- 青色で確定申告する
- 必要書類を十分に準備する
以上を踏まえて、あなたが無事に資金調達できるよう願っています。